中国i商標実務において特に注意すべきいくつかの点について

特許ニュース 平成 22年 5月 19日 No. 12745 
中国i商標実務において特に注意すべきいくつかの点について 
霍廷喜超凡知識産権代理有限公司商標代理人 
商標法及び商標実務の面で、中国は他の国といろいろ異なるところがあるのは周知のことである。その異なりが無視された又は十分重視されていないため、思いがけない損失又は迷惑を及ぼしたことが多い。日本企業を含む外国の企業のために少しでも役に立てばと思い、筆者は長年の商標実務の経験を基にして、特に注意すべき点を以下にまとめる。 
一、商標所有権の一体観念 
観念から言えば、中国は一つの商標を、それが登録されたものであろうと、出願中のものであろうと、分割することのできない全体と捉えている。同一又は類似する商品又は役務について登録された複数の同一又は類似商標も、分割することのできない全体と捉え、異なる所有者によりそれぞれ享有されることを許可しない(共同所有の場合は同一所有者に享有されるとする)。この観念は中国商標立法及び審査実践に多大な影響を及ぼしているので、外国の当事者にとって特に注意すべきところである。 
1. 同一又は類似する商品?役務について出願された同一又は類似する商標は同一所有者に属さなければならない 
『商標法実施条例』第25条第2項の規定により、「登録商標を譲渡する場合には、商標権者はその同一又は類似する商品について登録された同一又は類似する商標を一括して譲渡しなければならない」。この条文は法的立場から商標権者が随意に自分の商標権を処分することを厳しく制限している。それに納得していない外国の商標権者は少なくはないが、結局それに従わなければならない。 
この観念は引用商標の審査にも影響している。商標局及び商標評審委員会は消費者の利益を保護するよう、『商標法』第28条の規定を厳しく執行し、後に出願された商標と前の引用商標との共存を絶対に許可せず、前後の権利者の間で結ばれた共存同意書も断じて考慮しなかった。2007年10月16日、商標評審委員会は2007年第24回事務会議で、拒絶に対する不服審判における「同意書」問題に関して真剣に討論をした上、消費者に混同を生じさせない商標の共存を認めるとの結論を出した。そのために、以下に掲げる二つの要素を考慮しなければならない。 
(1)両商標の指定商品の類似性の程度、両商標の類似性の程度及びそれぞれの周知度。両商標の指定商品が『類似商品?役務区分表』で同一類似群に属されてはいるが、類似性の程度が低く、両商標の文字、図形又は他の構成部分に類似するところがあり、普通の審査基準により類似商標だと判断すべき商標は、全体的外観が消費者に区別できる場合、共存することができ、後の商標登録出願が登録と裁定される。逆に、両商標の指定商品が同一商品又は緊密に関連している商品であり、且つ両商標の文字、図形又は他の構成部分の類似性程度が高く、消費者が区別できない場合は、共存が許可されなくなり、後の商標登録出願が拒絶と裁定される。 
(2)両商標の周知度。引用商標の周知度が高く、後の商標登録出願が登録されたら消費者に混同を生じさせやすい場合は、後の商標登録出願が拒絶される。後の商標登録出願がすでに実際に使用され、且つ一定の影響力を有している場合は、引用商標と類似するところがあるとしても、消費者に引用商標と区別することができるものは、登録が許可される。 
両商標の類似性の程度が低く、消費者に区別でき、且つ引用商標の周知度が後の商標登録出願に比べて低いという条件の下、商標評審委員会は拒絶に対する不服審判の段階で共存同意書により両商標の共存を考慮することができ、後の商標登録出願を登録と裁定することができる。商標評審委員会のこの規定は、実のところ、一定の条件の下で『商標法』第28条相対的理由に関する審査基準を緩めたことになり、商標者の利益を考慮した上で商標権者の随意に私権を処分する権利に対する尊重を表し、審査基準の進歩を表している。 
2. 同一商標は絶対に分割できない 
一件の商標を分割して、各部分をそれぞれ異なる主体に譲渡することを許可する国があるが、中国ではこのようなことはできない。その裏にある原因は、同一商標が絶対に分割できない全体という観念を中国が貫いているというところにある。複数の類似商標が一定の条件の下で異なる所有者に属されることはできるが、同一商標は絶対に分割することができない。商標法第三回改正草案においては、この点に関しては少しも緩和されていない。 
3. 一部拒絶における「一体観念」の表れ 
『商標法』第二回改正前、商標局は、一部の商品又は役務について拒絶されるべき商標登録出願を、拒絶されるべきではない部分を含めて全部拒絶していた。その原因はやはり商標一体不可分という観念にある。2001年10月27日の第二回改正後、この観念は少し緩和され、その具体的な表れとしては、その後、2002年9月15日より実施された『商標法実施条例』第21条第1項がある:「商標局は規定を満たす登録出願又は一部の指定商品について登録要件を満たす登録出願の場合には、初歩査定をし、且つ公告する。規定を満たさない登録出願又は一部の指定商品について登録要件を満たさない登録出願の場合には、これを拒絶し又はその一部の指定商品について商標を使用することを拒絶」。 
しかし、このような緩和はまだ限られている。出願人が拒絶された一部に不服審判を請求した場合、初歩査定により登録と査定された部分も公告が見合わされ、不服審判の決定又は訴訟の判決が効力を生じなければ、指定商品又は役務を全部公告か一部公告かを決めることができない。不服審判で出願人が勝った場合、指定商品又は役務が全部登録されることになり、公告される;不服審判で出願人が負けた場合、元々初歩査定により登録と査定された部分の商品又は役務のみが公告される。言い換えれば、出願人が一部拒絶に対する不服審判を請求した場合、出願全体が「一体に縛られて」評審段階、又はさらに行政訴訟段階に入ることになるだけであり、出願人が初歩査定により登録と査定された部分と拒絶された部分とを分割することにより、登録と査定された部分のみが公告され、拒絶された部分が単独で評審段階に入るというようなことはできない。これは同一商標一体観念の延伸である。当然、もし出願人が拒絶された一部に不服審判を請求しない場合は、初歩審査により登録と査定された一部が後に公告される。国際商標出願の一部拒絶は例外であり、拒絶に対する不服審判は拒絶された一部の指定商品に限られ、登録と査定された部分の指定商品は直接登録されることとなる。 
二、費用納付制度 
商標局及び商標評審委員会は以下の費用納付に関しては特別なやり方があり、当事者はそこを特に注意する必要があり、予算を立てるときにも考慮しなければならない。 
1. 国内出願(National application)一出願多区分制を適用しない 
『商標法』第20条の規定により、直接商標局に提出される商標登録出願は、「異なる類の商品に同一の商標登録を出願するときは、商品分類に従い、各類について、登録の出願をしなければならない」、即ち「一商標一区分一出願」であり、「一出願多区分」は許可されない。出願人は区分毎に費用を納付しなければならない。『マドリッド協定』(Madrid Agreement)及び『マドリッド議定書』(Madrid Protocol)により中国を指定する国際出願(International application)をすることができるが、異議が申し立てられた場合や拒絶に対する不服審判を請求する場合、当事者は区分毎に商標局又は商標評審委員会に費用を納付しなければならない。当然、異議申立に対する答弁は国内出願でも国際出願でも官庁手数料は要らないので、費用を納付することはない。 2. 国内出願における「アイテムオーバー」費用 
商標局が公表した『商標業務料金表』により、商標登録出願を受理する費用は 1000人民元であり、指定商品又は役務が10項に限られている。商品又は役務が10項を超えた場合、第11項より一項ごとに人民元100元が徴収される。いわゆる「アイテムオーバー」費用である。出願人が一つの出願で多数の商品又は役務を指定する必要がある場合は、「アイテムオーバー」費用を考慮しなければならなくなる。当然10項以内(10を含む)では費用が同じであり、別途費用が発生しないので、出願人としても権利を十分利用し、10項以内でできるだけ多くの指定商品又は役務を指定することができる。 
3. 費用の分割納付制度なし 
中国における商標登録出願は一括で費用を納付する制度であり、日本を含む他の国と同じような分割納付制度は採用されていない。商標局は出願を受理する際一括で費用を徴収し、公告及び登録の際は別途費用を徴収しない。異議、放棄、拒絶などにより商標が結局登録できなくても、すでに納付した費用は返還されない。 
三、国際登録後の登録商標書申請 
マドリッド同盟に加盟した国の数の増加に従い、出願人が『マドリッド協定』(Madrid Protocol)又は『マドリッド議定書』(Madrid Protocol)により中国を指定することも益々増えてきている。『マドリッド協定』に規定される12ヶ月又は『マドリッド議定書』に規定される18ヶ月の審査期間内で、中国を指定した商標は中国商標局により拒絶されなければ、当該商標は自動的に中国で登録されることになる。現在のところ、商標局は自動的に中国で登録されることになった商標に対しては、保護査定通知書又は保護証明書を発行しない。商標局のデータベースで関連登録情報を検索できるが、商標権者は官庁の登録証明書などは一切所持していないこととなる。商標権侵害されて工商部門等に訴え出る又は訴訟を提起する必要がある場合、商標権者は商標局に保護証明書を申請しなければならなくなり、官庁手数料及び数ヶ月の時間も必要となる。これによって権利行使の最適な時機を逸し、権利侵害容疑者を見逃す可能性がある。したがって、万が一のために、商標権者は商標が自動的に登録された直後に中国での保護証明書を申請する必要がある。国際出願は中国を指定する際一つの出願において複数の区分を指定することができ(即ち、一出願多区分/ Multi-class)、且つ官庁手数料も比較的に安く、審査期間に関しても明確に規定されている。国際出願はある程度時間的にも金銭的にも経済的だと言える。一方で、商標局は審査官を300名新しく募集したこともあり、審査速度が顕著に上昇している。商標局は、2012年までに審査期間を10ヶ月まで短縮するという目標を設けている。このようになれば、国際出願は審査期間の面での優位性をなくすことになる。2011年より中国を含む加盟国は、国際登録商標に対し保護通知書を発行しなければならないという規定があるが、その通知書も英語、フランス語又はスペイン語のものにほかならない。中国において商標権を行使する場合は、法律執行機関及び司法機関が権利者たちに中国語の証明書を要求している。その証明書としては、最も法的効力を有するのは商標局が発行した証明書である。国際出願に必要な費用及び登録証明書を申請する費用とを合わせて見れば、国内出願のコストが必ずしも国際出願より高いとは限らない。したがって、出願人にとって、便利で実用的な国内出願もとてもいい選択肢である。 
四、時間制限は一切延長できない 
2001年12月1日中国のWTO加盟後、WTOの関連条約と一致させるために、中国は当時の『商標法』に対して第二回改正をした。しかし、残念なことに、あわただしく改正したので、各種の時間的制限(例えば、補正期限、優先権期限、異議期限、答弁期限、不服審判請求期限、存続期間更新申請期限など)に関しては延長の規定を設けなかった。特に拒絶に対する不服審判請求及び異議決定に対する不服審判請求に関しては、『商標法』第32条及び第33条の規定により、当事者の請求期限は十五日しかない。当事者又はその代理機構に拒絶通知書又は異議決定通知書が届いたのが長期の休暇日などの場合は、書類の準備の時間及び不服審判請求理由を書く時間が非常にきつくなる。この欠点が当事者にもたらした不便は明らかである。幸いなことに、関連機関はすぐにこの点に気付き、後に2002年9月15日から実施された『商標法実施条例』を通して、挽回をした。『商標法実施条例』第32条の規定により、「当事者は不服審判の請求を提出してから又は答弁してから関係証拠を補充する必要がある場合、請求書類又は答弁書にその旨を声明し、請求書類又は答弁書を提出してから三ヶ月以内に提出しなければならない。期間内に提出しなかった場合、関係証拠を補充しないものと見なす。」当事者が期限内で提出された不服審判請求書類で証拠補充の声明さえすれば、商標評新委員会は当事者が関連証拠書類を補充することを許可する。代理機構を通して不服審判を請求する場合、当事者が証拠の補充が不要だと明確に要求さえしなければ、代理機構は普通3ヶ月以内での証拠補充を声明する。結局証拠補充が不要になった場合でも、このような声明は不利な影響を及ぼさない。但し、当事者が注意しなければならない点はまだ二つある。第一に、補充と許可されているのは証拠書類のみであり、新しい法的依拠(主に関連条文を指す)、理由、請求は含まれていない。当事者は依然として最初に不服審判請求書類を提出する際に可能な法的依拠、理由及び請求を全部提出しなければならない。第二に、『商標評審規則』第20条により、「当事者は、申請書又は答弁書を提出した日より3ヶ月以内に一括して補充証拠を提出しなければならない」。異議申立に関しては、一括して証拠書類を提出しなければならないというような明確な規定はない。 
五、異議申立及び異議決定に対する不服審判手続きに関して 
1. 被異議人の答弁に対して異議申立人は反論又は反証できない多数の国又は地域では、異議手続きは一般的に以下の四段階がある。(1)異議申立人が異議を提出、(2)被異議人が答弁、(3)異議申立人が答弁内容に対して反論又は反証、(4)商標主管当局が決定。中国の異議手続きは『商標法』第30条、第33条及び『商標法実施条例』第22条により規定されており、上記の(3)の手続きがなく、異議申立人による異議の提出、被異議人による答弁の後、商標局が直接決定することになっている。言い換えれば、被異議人に異議申立人の異議理由書および関連証拠は届くが、異議申立人に被異議人の答弁理由及び証拠は届かない。商標局は自発的に被異議人の答弁資料副本を異議申立人に届けるようなことはしない。もし積極的に案件書類閲覧の申請をしなければ、異議申立人は異議決定通知書が届いた後でなければ、被異議人の答弁理由及び証拠の要点を知ることができない。筆者の判断では、この差異は明らかに手続き上の欠点だと思われる。異議申立人が中国商標法律に詳しくない場合、代理機構としては異議申立人にこの欠点に気をつけるよう注意し、その上異議申立人に答弁の状況を把握させるため積極的に商標局に案件書類閲覧の申請をするよう提案しなければならない。異議手続きは申請から決定が出るまで二年以上はかかる。たとえ『国家工商行政管理総局の商標業務を国際化する計画(2008年から2012年まで)』の「商標異議決定に関しては、審理期間を20ヶ月以内にする」という目標から見ても、審理期間は依然として長い。異議決定が出るとき、答弁資料の中に時間が長すぎて事実かどうか確かめられなくなる内容も出てくるので、異議申立人に多大な損失を及ぼすこともある。異議段階で異議申立人は被異議人の答弁内容に対して反論又は反証ができないが、できるだけ早く答弁内容が事実かどうかを確かめて、反論又は反証を準備し、異議決定に対する不服審判又は訴訟まで行った場合は補足をすることができる。 
2. 異議決定に対する不服審判の際、異議手続きの際提出した証拠及び理由はもう一度提出しなければならない中国の異議決定に対する不服審判手続きは『商標法』第33条及び『商標評審規則』第28条により規定されている。現在のところ商標局と商標評新委員会との関係に関しては明確な法的定論がないため、異議決定の対する不服審判の審理範囲という問題に関して、異議決定に対する不服審判裁決に唯一の管轄権を持っている北京市第一中級人民法院と商標評審委員会との見解が異なっている。商標評審委員会は『商標評審規則』第28条により、「商標評審委員会は商標局の異議裁決に対する不服申立案件を審理する場合、当事者の不服審査の申立並びに答弁の事実、理由及び請求に対して評審」を行うのであり、当事者が異議段階で商標局に提出した事実、理由及び請求により評審を行うのではない。実践上、異議決定に対する不服審判の段階では商標局は異議段階の案件証拠、理由及び請求を自発的に商標評審委員会に渡すことはしない;商標評審委員会も職権により上記の証拠、理由及び請求を商標局に渡してもらうことはしない。当事者はもしこの点を見落として、商標評審委員会が絶対に異議段階の資料を見られると思い込んで、異議段階で提出した証拠、理由及び請求をもう一度提出しなかったら、多大な損失を蒙る可能性がある。しかし、異議決定に対する不服審判裁決に唯一の管轄権を持っている北京市第一中級人民法院は考え方が違う。「商標局での初審手続きと商標評審委員会での不服審判手続きとの関係は普通の意味での行政再審査ではなく、一審と二審の関係にもっと近い。」北京市第一中級人民法院は商標評審委員会に「職権により当事者が異議段階で提出した書類を商標局に渡してもらい、且つ審査する」又は「不服審判で段階でもう一度書類を提出するよう書面にて当事者に通知し、当事者にその挙証義務をはっきり知らせる」ことを提案している。ii商標評審委員会のこのようなやり方も当事者にメリットをもたらすことがある。というのは、当事者は異議決定に対する不服審判段階で新しい証拠、理由及び請求を提出することができる。もし当事者が異議段階で手抜かりなどがあった場合、不服審判段階で補足することができる。但し、当事者が北京市第一中級人民法院まで訴訟を提起した場合、異議決定に対する不服審判段階で提出した新しい証拠及び理由は認められない可能性がある。 
六、エンフォースメント 
商標権者が主に訴訟を通して商標権の保護、商標権侵害行為の差止めをする国が多い。中国では、司法ルート以外に、行政ルートを通して商標権にかかわる法律を執行することもできる。商標権に係る法律を執行する行政機関は、主に税関、公安機関及び各級の工商行政管理部門(以下で「工商部門」と略称する)。税関及び各級の公安機関の商標権に係る法律執行行為は主に『商標法』以外の法律法規により規定され、工商部門の商標権に係る法律執行行為は(以下で「工商執法」と略称する)『商標法』により規定されている。『商標法』第53条により、当事者は協議による解決及び訴訟の他には、工商部門に商標権侵害行為の差止めを請求することができる。工商行政管理部門は処理を行う場合、権利侵害行為と認めたときは、「直ちに侵害行為の停止を命じ、権利侵害商品及び権利侵害商品の製造用並びに登録商標表示偽造用の道具を没収、処分し、かつ、過料を科す」ことができる。『商標法』第55条は工商部門が商標権侵害行為を取り調べ、処置する具体的な職権をさらに明確にしている。 
(一)関係当事者を尋問し、登録商標使用の排他権の侵害に関する状況を取り調べる。 
(二)関係当事者の侵害行為に関する契約、領収書、帳簿及びその他の関係資料を調べ、写しをとる。 
(三)関係当事者が商標使用の排他権に対して行った侵害嫌疑行為の場所について現場検証を行う。 
(四)侵害行為に関する物品を調査する。他の者の有する登録商標使用の排他権を侵害するために使用されたことが明らかな物品については、それを封印し、差し押さえることができる。 
工商部門は上から下まで四つのクラスがある: 
(1)国家工商行政管理総局、(2)省級工商局、(3)市級工商局及び(4)県級工商局。県級工商機関の下にはさらに工商派出所が設けられている。このようにして全国的な工商執法ネットワークが構築され、このシステムは全国の隅から隅まで浸透している。中国は広く、人口の多い国であるので、数の限られている司法機関だけで商標権にかかわる法律を執行すれば効率も低く、効果も保障できない。現状から言えば、商標権の工商執法はまだ改善されなければならないところがあるが、総じて言えば中国の実情にふさわしく、商標権侵害行為を差止め、商標権者の権利を保護するには効率の高く、実用的である。 一方、工商部門は、商標権者又は利害関係人の申請なしに、職権により自発的に商標権にかかわる法律を執行することができる。工商検査過程で工商部門は登録商標専有権侵害行為を発見した場合、直接取り調べ、処置をすることができる。但し、商標権者又は利害関係人には通知しない。一方、工商部門は商標権者もしくは利害関係人の訴え、又は公衆の通報により取り調べ、処置をすることもできる。商標権者又は利害関係人は、商標権の保護、権利侵害行為の処置を申請する場合、工商執法を始動させるために、事前に十分な調査及び証拠収集を行う必要がある。訴えた者の情報ミスにより工商執法が訴えられた者に損失を及ぼした場合、訴えた者は法的責任を負うことになる。要するに、司法手段による商標権保護に比べれば、行政部門の法律執行には官庁手数料の納付も不要であり、訴え出る際に必要な証拠も比較的に簡単であり、時間的にも司法訴訟より速い。 但し、商標権者が注意しなければならないのは、工商部門は商標権侵害行為を差止め、権利侵害者に過料を科すことができるが、商標権者に賠償はしない。賠償を求める場合、商標権者は別途、訴訟を提起する必要がある。現在のところ、通常、中国では権利侵害者の生産規模が小さく、財務の勘定項目がはっきりしないことが多く、また損失又は利潤がそもそも証明するのが難しいものであり、訴訟を通して賠償を請求しても、商標権者は当初の目的を達成できないことが多い。調査費用、弁護士代理手数料などのコストを総合的に見れば、「裁判では勝ったが金銭的には負けた」権利者が多い。したがって、権利侵害行為に対しては、権利侵害行為を差止めるのが比較的に現実的な目標であり、工商執法が最も勧められる経済的な解決方法である。 
七、登録マークの正しい使い方 
中国は登録商標マークの使用に対する管理を厳しくしている。未登録商標(未出願又は出願中の商標両方を含む)について、商標権者は「TM」(商品商標「Trade Mark」の英語の略)又は「SM」(役務商標「Service Mark」の英語の略)をつけることができる。このような商標に関しては、他の者の登録商標専用権さえ侵害しなければ、法律的には制限的な厳しい規定はない。商標が中国で登録された場合、商標権者は『商標法実施条例』第37条により、商標を使用する際その右上又は右下に「登録商標」又は登録マーク(主に「○注」と「○R」の二つのマーク)を標記することができる。但し、たとえ登録商標権利者であっても、十年間の存続期間内において、且つ『商標法』第51条により登録された指定商品又は役務についてしか登録マークを商標に標記することができない。存続期間を超えた又は登録された指定商品以外の使用の場合は『商標法』第48条に規定される「登録商標の虚偽表示」行為になり、工商部門が職権によりその使用を停止させ、指定の期間内に状況を是正させるものとし、かつ、非難通知を回状し又は過料を科すことができる。『商標法実施条例』第42条の規定により、過料の金額は不法経営額の20%以下又は不法利益の2倍以下である。外国の企業にとっては、中国で生産、販売する際に登録マークを正しい使い方で使用すべきである。それだけでなく、その製品を他の国から中国に輸入する際にもこれに十分注意しなければならない。特にその商標が他の国又は地域ですでに登録され、中国でまだ登録されていない場合は、この問題はよく見落とされる。商標権者は製品が中国に輸入される前に、製品、製品包装、説明書、パンフレットなどの書類において間違った使い方で使用されている商標登録マークを直さなければならない。もし直さなければ、たとえ工商部門に発見されなかったとしても、ライバルや一般消費者に発見され、工商部門に通報される可能性があるので、工商部門は通報により間違った使い方で使用されている登録マークを取り調べ、処置することができる。 
八、輸出のためだけの製品に係る商標権侵害リスク 
中国では外国の顧客の注文書により受注生産(OEM)する方法で中国で製品を生産し、その製品を中国から他の国家、地域へ輸出する企業が多い。その製品はほとんど中国で生産しかせずに、直接外国に輸出され、中国では販売されない。この場合、製品に使用される商標が中国において権利侵害になるかどうかという問題を予めはっきりさせなければならない。『商標法』第52条第1項の規定により、商標権者の許諾を受けずに、同一商品又は類似商品にその登録商標と同一又は類似の商標を使用する場合は登録商標専用権侵害行為になる。『商標法実施条例』第3条はこれをさらに明確に規定している。「商標法及び本条例にいう商標の使用とは、商標を商品、商品の包装又は容器、及び商品取引書に用い、若しくは広告宣伝、展示及びその他の商業活動に商標を用いることをいう」。したがって、輸出のためだけの同一又は類似商品又は役務についてすでに中国で登録された同一又は類似商標を使用する行為は商標権侵害行為になる。生産企業及び外国の注文者は商標を使用する前に、他の者の登録商標専用権を侵害しないよう予め調査を行う必要があり、できるだけ早く中国大陸において商標登録出願を提出したほうがいい。もし第三者がすでに同一又は類似商品について同一又は類似商標を登録しているとすれば、使用者としては以下の解決策を考慮することができる。 
(1) 権利侵害にならない商標を使用する、即ち商標を変更する。 
(2) 先の商標権者の許可を求める。もし可能であれば、製品が中国大陸を出た後で商標を製品につける。但し、同時に注意しなければならないのは、『商標法』第52条第3項の規定により、他の者の登録商標の標識を偽造若しくは許可なく製造し、又は偽造若しくは許可なく製造した登録商標の標識を販売する行為も商標権侵害になる。したがって、中国大陸での登録商標の専用権を侵害しないために、商標の標識も中国大陸以外のところで生産及び使用しなければならない。他の国家又は地域で商標権侵害になるかどうか及びその解決策は、更なる調査及び実情を考慮した上で決めなければならない。 
i中国は中国大陸、中国台湾、中国香港及び中国澳門の四つの法的地区に分けられている。本章で言う「中国」は中国大陸を指す。 

ii芮松艶:『商標行政案件審理状況総合分析』、『中華商標』 2010年第1期第 65ページから69ページに掲載されている。  


                                                                                                                                   By Tingxi Huo